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脱毛症について
倉田荘太郎

 一本の毛は人体のひとつの器官として肝臓や腎臓といった重要臓器と同じく複雑な構造を持ち、様々な生体の条件の下一生懸命機能しています。それはたとえ産毛であっても太い毛と変わらぬ構造を持ち、ケラチンたんぱく質で出来た毛幹を作り、毛周期に従い休止しさらに脱毛し、また新たな毛幹を作ることを繰り返します。人間の体表には約150万本の毛があるといわれ、頭部には10から15万本があると考えられています。西欧人に比べ日本人では毛の密度が低く1平方センチあたり肉眼では150本前後というところです。厳密に小さな産毛もカウントすれば最低でも200本以上は存在しているでしょう。さて毛と言う言葉は医学的には毛幹部をさすと思われますが頭の毛は毛髪または頭髪とも呼ばれ、われわれの学会も臨床毛髪学会と命名されています。毛根は皮膚の表面より深層にある毛幹とそれを包み込む毛包からなり、毛包脂腺系と呼ばれるように脂腺が付属し毛管内に皮脂を分泌しています。さらに詳しく毛包の構造を見てみると(図1)の最下層に涙のような形をした部分がありますが、これが毛乳頭で近年育毛剤の宣伝でも取り上げられ有名な名前となりました。そのすぐ上の部分が毛母で一生懸命細胞分裂を行っているいわば毛の製造工場にあたります。毛乳頭はこの毛母と相互作用し毛を作るよう指令を出しています。これらの細胞分裂はただのんべんだらりと続くわけではありません。それぞれの毛包は独自の毛周期を持ち別々のサイクルで活動しています(図2)。頭髪では2から7年分裂しながら毛幹を作りこの期間を成長期と呼びます。この期間を過ぎると毛包の下部が萎縮する退行期にはいり約3週間でまったく毛を作らない休止期になります。この期間は約3ヶ月ありこの間にブラッシングなどの小さな力で抜け落ちる状態を休止期脱毛と呼びます。この休止期が終わるとまた新たな毛幹を作り始めるというわけです。近年毛にも幹細胞が存在しネズミでは脂腺のすぐ下のバルジと呼ばれる部分、人間ではさらに広い範囲にあり毛周期が成長期に入るときにここから毛母細胞が供給されているのではないかという説が有名になりました。
このように毛の研究は日々進歩しています。では脱毛症はなぜ起こるのでしょうか、また有効な治療はどれなのでしょうか。臨床的にはまず患者さんの脱毛症がどんなタイプのものであるかを知らなければなりません。そこで次に代表的な脱毛症をあげておきます。

1) 男性型(若年性または壮年性)脱毛症
2) 円形脱毛症(通常型、全頭型、全身型)
3) 感染(真菌、細菌)
4) 瘢痕(やけど、外傷など)
5) 薬剤(抗ガン剤、その他の薬剤)
6) 全身的疾患の随伴症状
7) トリコチロマニア(抜毛)
8) 生理的脱毛(分娩後)

なかでも1)2)は頻度が高くその詳細は次項に譲りますが、一言で表現すれば男性型脱毛症は成長期の短縮による毛包のミニチュア化、円形脱毛症の原因は確定してはいませんが現在自己免疫異常により毛包組織の直接破壊が起こっている可能性があると考えられています。

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